HOME > れいばんサンのひとりごと > 2016年11月27日号
れいばんサンのひとりごと
■ レイバンスファースト。すべての「K」に敬愛を
◎◎ちゃん!

駅から住宅街の狭い路地裏を歩いている時、その腰の曲がった老婆は自宅の壁際に置かれたプランターに向かって呼びかけた。

きっとそこに、老婆の馴染みの野良猫がいるのだろうと思い、緑の方に視線を投げかけた。矢先、老婆は言葉を続けた。

本当にねぇ、キレイに咲いてくれて、ありがとねえ。

思わず涙が出そうになる。否、実際に胸の内では泣いていたのかもしれない。

初夏の訪れを体全体で感じることができるようになった黄昏時の住宅街。クルマ2台がすれ違うのもやっとの路地裏。

日常で何を愛でるかは、もちろん人それぞれである。動く生物にだけ思いを馳せる人ばかりではない。

動物に話しかけても言葉が通じないことは百も承知で野良猫に語りかけることと、動かぬ花に話しかけるのは同様の行為なのだ。

そんな当たり前のことを、自らの生活に押し潰されながらどこかで忘れている。

ひょっとしたらこの経験こそが、セレンディピティなのかもしれない。

今年も、大きな災害に見舞われた方々に心より御見舞を申し上げます。

夏が過ぎ、2016年も寒い冬が訪れた。いかに南北に広い日本列島の南に位置するとはいえ、被災者には堪える季節であろう。

正直、2016年は良いことも悪いことも綯い交ぜの年であった。後の世ではひょっとすると良くない方に比重が置かれるかもしれない。

それでも、我々は野球ができたことに喜びを感じた、という想いだけを覚えておきたい。

かの忌まわしい月日を70年以上にも渡り放棄し、そして今年もそれを持続できたことに喜びを感じよう。日々の積み重ねの尊さと共に。

我がチームは、今年10月で結成20周年を迎えた。ここまで来られたのも、選手たちの思いと日々の積み重ねからだ。

小さな花に語りかける。その日常の尊さを胸に、また来季も、1試合1試合を大切に生きよう。